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「微熱37.4℃」【3】(完結)

「はい、ジョミー。検温のお時間ですよ」
「はっ、はいぃっ」
いきなり名前を呼ばれると同時に部屋の電気がついて、ボクは現実に引き戻された。
うあー、よかった。なんか知んないけど、ボク今すっごくあぶなかった。
ドアの所にはいつの間に入ってきたのかリオが立っていて、ベッドに近づくと、ボクの腋下に体温計を挟み込んだ。

思わず大声を挙げてしまったボクは、ブルーをも起こしてしまったらしい。右腕がもぞもぞと動き出すと、まだ眠そうにボクを見上げた。
「ジョミー、起きたのかい」
声だけ聞けばいつものあのヒトだったけれど、寝ぼけてるわ、目はぽってりと腫れてるわでいつもより幼い印象を受ける。ものすごく年上の人なんだけど不遜にも可愛いなんて思ってしまう。
「あ、いや、ごめん。起こしちゃって」
本当は他にもっと謝らなければいけないことが山ほどあったけど、後ろめたすぎて言葉には出なかった。まともにブルーの顔を見れなくて、目がウロウロする。
「ああ、すまない。僕の方が寝てしまった。お腹が空いただろ? 今用意するから」
そそくさと立ち上がると、ブルーは奥の方へ姿を消した。何のことかわからずにリオの方を向く。
「野菜スープ。丸一日寝てましたから、普通の食事はもう少ししてから。けっこう美味しいですよ、ソルジャーの料理」
え? そんなに寝てたんだ…つか、ブルーって料理できんの? 何にもできなさそうなのに!
「思考がダダ漏れですよ。初代ミュウ達は自活時代が長いですから、大抵の事は自分で出来ます。まぁ、私もソルジャーのエプロン姿を見るなんて久しぶりですけどね」
「え?」
エプロン? ブルーのエプロン?
キッチンからはコトコトとスープを温め直すいい匂いがしてくる。
ブルーを手伝うという名目でひと目エプロン姿を拝もうと身体を起こしたボクに、リオの容赦ないストップが入る。
「動かないで下さい。点滴の管が外れます」
「そんな、すぐに外れる点滴なんかしないだろ? リオ」
「ま、そうですけど。逆流してますよ、血」
指摘されて管の入った手首を見ると、血管から点滴の管へ5~6センチ赤いものが走ってる。
そんな何気なく言うなよ!「ジョミー、ご飯こぼしてますよ」と同じテンション!
「わ、リオ、血! 血だよ! 血」
「だめですよ、むやみに動かしちゃ。落ち着いて手を心臓より下に下げて下さい。そうすれば、逆流は元に戻ります。トイレに行く時とかも気をつけて下さいよ」
慌ててバタバタ腕を動かすと、リオの腕がボクの手首を支えてゆっくりと身体の脇に下ろす。
「ありがと‥‥ところで、いつからいたんだよ?」
どうにも後ろ暗いところがある身の上だけに具体的な内容で話しを訊けない。
「んー、あなたがが抱き枕にされてたあたりからですかね」
「最初っからじゃん! なんで黙って見てるんだよー」
思わずベッドに顔を突っ伏す。一人えっち見られるよりタチが悪いよ。
「いえ、他人の恋路を邪魔するほど野暮ではないつもりなので。ですが犯罪に発展しそうでしたので僭越ながら止めさせて頂きました」
「なんのことかな、それ」
すっとぼける。
するとリオはニッコリ笑ってこう言った。
「言葉通りの意味ですよ。それにしてもジョミー、そんなさわやかそうな顔して結構変質者的なことをさらっと平気でやってるというか…」
「……」
言葉もないボクは黙るより他無かった…その通りだね。

ピピピピッ ピピピピッ♪

その時体温計のアラームが鳴った。
液晶を見ると数字は37.4℃を表示している。
「微熱ですね。ドクターの診断は、サイオンの使いすぎによる疲労。それと【知恵熱のようなもの】だそうです」
知恵熱? 14歳にもなって知恵熱?
密かにヘコんでいると、ブルーがお盆にスープを入れた皿を乗せてやってきた。
あ、残念。エプロン外しちゃってる。
「できたよ。ゆっくりよく噛んで食べるんだよ、胃がびっくりするからね」
リオがセットしてくれた病人用の小さな折り畳みテーブルの上に、スープを乗せてくれる。
「さ、早く召し上がって下さい。お腹が空いたからといってソルジャーを食べられたんじゃ困りますから」
「?」
「いっ!いただきます!」
「はい。どうぞ召し上がれ」
ブルーからスプーンを受け取ると、早速スープを口に運ぶ。賽の目に切ったいろんな野菜がたくさん入った具だくさんスープだ。トマトベースでちょっぴりにんにくが効いてて食欲をそそる。
「すごい美味しい!」
ブルーは【よかった、口にあって。なにしろスープなんて作るのは久しぶりだから】と、はにかむように笑った。長いまつげが伏せられて目の淵が少し朱に染まる。すごく綺麗。

「赤いスープは元気が出るからね。体調が落ち着いたら冷やしたのを食べるといいよ。味を足して冷蔵庫に入れとくから」
言いながらずり落ちかけてたカーディガンを肩に掛けてくれる。
またシャボンの香りが広がって、ボクは先ほどのことを思い出してしまう。
ブルーの髪の感触はまだ指に残っている。
ボクは口の端についたスープを拭うふりをして指先にkissをした。

37.4℃の微熱は、まだ冷めない。


お付き合いくださいましてありがとうございました。 4回くらい♪と言っていたのに3回で終わってしまいました(^_^;)。 
今回ブルーがスープに使っていたのは【momo屋のきざみにんにく(料理用)】。刻んだ生のにんにくとローストしたにんにくを調味オイルとミックスしたものなんですが、結構重宝してます。125gで¥260くらい。ちなみに私はワゴンセールで半額で買いました♪

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