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【ボクハアナタガスキダ】(2)その3

「まさかアンタから恋愛ごとで相談を受けるとは思わなかったな」
「百戦錬磨のキャプテン・ハーレイに教えを請おうと思ってさ」
冗談めかした言い方をして照れを隠す。
もちろん、誠実を絵にかいたようなハーレイが百戦錬磨であるわけはない。
手先以外はどちらかというと不器用な方だし、本来こんな恋愛事は苦手な分野だろう。
嫌味ととったのかハーレイは微妙にイヤそうな空気を醸し出しながら、それでも僕の駒を二つ取っていった。
一つの駒で二つの駒を取る。
彼の得意なフォーク(両取り)だ。
しまった・と、心の中で舌を打つ。
どうにも今日は集中できないな。

「私は野暮天ですよ。百戦錬磨ならゼル機関長でしょう」
「あの人惚れっぽいから~」
「でも百戦連敗なんだよな」
「あの人怒りっぽいから~」
「いい人なんだがなー」
「なかなかいい味は出してると思うんだけどね~」
本人がいないと思って言いたい放題だ。
「ゼルの話じゃないでしょう?」
ハーレイが無理やり本題に戻す。
「そうなんだ、どうしよう」
「どうしようって…好きか嫌いかでしょう?」
「嫌いなわけないだろう。ジョミーだぞ」
「なるほど。じゃ、付き合いたいか付き合いたくないか」
付き合う?…付き合うって…。
「交換日記から?」
「どこの小学生!」
「え? じゃいきなり交際かい? それはちょっと性急過ぎないだろうか。 こういうことはね、やっぱりきちんと段階を踏まないとね。いろいろと準備もあることだし…」
「乙女か! 何の準備!」
ふーぅうと、ハーレイがこれ見よがしな溜め息を付き、額に指先を当てていかにも『やれやれ』といった風情で軽く頭を振って見せる。
眉間のシワは更に深くなって500円玉が3枚くらい挟まりそうだ。
「いや段階踏むのも大切なことだけれども。じゃ、少し言い方を替えて…んー、そうだな。一緒にいたいかいたくないか」
「いたくないわけないだろう。ジョミーだぞ」
何だかバカの一つ覚えみたいに同じ回答を繰り返しているな。
「だったら、もう結論は出ているじゃないですか」
「出てないよ。『kissしてもいい好きかどうか』が今回の案件なんだぞ」
「いつから案件になったんですか。じゃ聞きますけどどうなんですか?」
「なにが?」
「ジョミーとkissしてもいいですか? ん?…いや、そうじゃないな…」
ハーレイは少し考えた後にこう言い直した。

「ジョミーとkiss『したい』ですか?」

「…わからない」
振り出しに戻ってしまった。チェスというよりすごろくをしている気分だ。
堂々巡りでいつまでたってもゴールに上がれない。
結局のところ『分からない』のだ。
ジョミーとkiss?
全く想像できない。
そもそも誰かと唇を合わせるなんて考えたこともない。

「まさか、今まで誰も好きになったことがないなんて事は…」
「はは、何言ってるの。いくらなんでもそんなわけ……」
途中まで言っておや?と思う。記憶にない。まったく引っかからない。じゃ、自分以外好きになれない? いや、自分のこともあまり好きじゃないしな。
いきなり黙ってしまった僕に、ハーレイがおそるおそる声をかける。
「ま…まぁ…『鋼鉄の処女』を落とせるかどうか、ジョミーのお手並み拝見といきますか」
「僕は女じゃないよ」
「じゃ、鋼鉄の童…」
「言うなぁぁっ!」
僕はすぐさまハーレイの口を片手で押さえた。
なんかいやだ。響き的になんかイヤだ。
勢い良く立ち上がったおかげでテーブル上の駒がぐちゃぐちゃだ。あぁ、せっかく勝ってたのに。
「あーもう、ぐちゃぐちゃじゃないですか。しかもアンタ今“あぁ、せっかく勝ってたのに”とか思ったでしょう!」
「読まないでくれたまえよ!」
「読むまでもないでしょうよ…今晩ブラウと飲みの予定が入ってるんですが、アンタも一緒にどうですか?」
「え~、なんか言われそうだな」
『なーにうだうだ悩んでんだい。だらしない!』とかスパーンと言われそうだ。
「ちょっと言われた方がいいんですよ、ガツーンと。じゃ、20:00にバーで。あ、駒はちゃんと片しといて下さいよ。私は勤務に戻りますから」
そう言い残してハーレイは仕事に戻っていった。
後に残されたのは床に散乱したチェスの駒たち。

てんでばらばらに散らばっていて、まるで今の自分の気持ちのようだ・と、僕は思った。

【つづく】


゜*☆*゜::+::゜*☆*゜::+::゜*☆*゜::+::゜*☆*゜::+::゜*☆*゜::+::゜*☆*゜::+::゜

うわ~、ジョミブルなのにジョミ全然出てきません_| ̄|○。
しょうがないので「じょ/みキャンディ」(←近隣の町の特産品♪ じょみの実で作られた赤い飴で大変滋養があるそうです)でも舐めようかと思います。

うわっ、あまずっぺ(*´∀`)ノ゜。

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【ボクハアナタガスキダ】(2)その2

「僕、こんなに攻撃的だった? 剣剥きだしでヤル気マンマンじゃないか。ライブラリーで見た元ネタの駒の王は剣は鞘に収めていたぞ」
「当時は凄かったでしょうに…。丸くなりましたね、アンタも」
本当に丸くなった…と感慨深げにふと見上げた目に飛び込んできたのは作り物とは思えないほど本物そっくりの青い空。
それも雲の上から見る濃い青色ではなく、地上から空を見上げた時の澄んだ水色に近い青を完璧に再現している。
この青の間はスイッチひとつで緻密にプログラミングされたホログラム映像が投射され、まるで地上の公園の中に佇んでいる様な気分を味わうことが出来る。
それだけではなく、当初実験的に始めた画像では表現しえない皮膚感覚へのアプローチを要する風をも作り出すことにも成功している。
空気の濃淡、気圧の高い所から低い所に向かって吹くという風の発生する原因を模倣して、部屋にあえて気圧差のある空間を作り、ダクトを通して部屋内に人工風を起こすのだ。
ここでは青い空、緑の芝生、咲き乱れる花たちに鳥のさえずり、そして肌には穏やかな風を感じることが出来る。
おヤエさん渾身の一作だ(彼女に言わせれば、これは科学ではなく空間プロデュースだそうだが…)。
先日も廊下ですれ違った際に『光の電場の振幅と位相の情報がどうたら』とぶつぶつとひとり言を言って歩いていた様な気がするが、とても声をかけられずにそのまま見送ってしまった。
さすがシャングリラ界の真/田志/郎。
とにかく物凄い集中力だ。
そんなプロフェッショナルな彼女の青い空を見ながら、ぼんやりとチェスを作る羽目になった当時を振り返る。
もう200年以上も前に遡るだろうか、探索に入った教育惑星のライブラリーのメディアの中に見つけた古いボードゲーム。
その時のブルーの食いつきようったら。
「ねぇ、ウィリー。コレ作ってみてくれないかな。ヒマな時でいいからさ」
「暇な時などあるかぁ!」
アルタミラを脱出してから30年近く経っていたが、シャングリラ内もまだまだ開発途上で、とてもじゃないが遊びに使える余暇の時間などありはしなかった。
それをそんなアンタ『週末気軽に出来るDIY』みたいな感じで持ってこられてもね。
「でも面白そうだろ? 手の空いた時で構わないからさ」
「だから手の空いてる時はないと言ってるでしょうが!」
大体いつ見つかるか分からない敵地内でデータを引っ張り出しているというのに、なぜにそんなにも余裕をかましていられるのか。
その神経がもう分からない。
「ふーん」
ブルーの身体から仄青白いオーラが立ち上り始めた。
マズイ…と心の中で警鐘が鳴る。
これは次にか/めはめ波が来るパターンではないだろうか。
そして打った後から『あ、ごめんごめん。最近サイオンのコントロールが利かなくってさー』と開き直る。
嗚呼、なぜ自分はかめ/はめ波に対抗し得る超爆/裂魔/波を練習しておかなかったのか。
『CH/A-LA HEAD-CH/A-LA』という永遠の名作ドラ/ゴンボールのOPが頭の中をぐるぐると回る。
『みんな、オラに元気を/分けてくれ!』。
どうか私には勇気を分けて欲しい。
断る勇気を!
じりじりと嫌な汗が額を流れる。
このままでは自分は黒こげだ。
このままではこのままでは…。
長い葛藤の末、そして私は言った。
「暇な時ね♪」
「悪いね、ウィリー。楽しみだなぁ」
にっこり笑ってゴリ押しをした後、それが効かなければ権力または暴力に訴え、更に理詰めで追い詰める。
ある意味完璧だが、最終的に理論的に相手を説き伏せるなら途中経過の圧力は必要ないのじゃなかろうか。
「わかってないねぇ、ウィリー。中間に圧力が入るからこそその後の理詰めが効果が出て来るんだよ」
ツンがあるからデレが効くようなものだろうか。
いや、そもそもそれは「マインドコントロール」というのじゃ…どうにも駆け引きが苦手な自分には今ひとつブルーの言うことが飲み込めない。
そう言うと、シレっとしてブルーは言うのだ。
「ま、そこが君のいいところだよね」
「不器用って言ったらいいでしょ」
「手先は器用だろ?」
あえて不器用のところは否定しなかったなと思いつつ、こんな小さい駒32個も作るのは大変でしたよと『ははは』と乾いた笑いを漏らしながら私は駒を進めた。
(本当にもう…)
半ば諦めたように私は言う。
「いつもにっこり笑ってゴリ押しなんですよね」

ブルーはやはり「エヘッ」と笑った。

【つづく】

゜*☆*゜::+::゜*☆*゜::+::゜*☆*゜::+::゜*☆*゜::+::゜*☆*゜::+::゜*☆*゜::+::゜
きゃぷてんって、大変なんだなぁ。
がんばれきゃぷてーん(ノ゚O゚)ノ。

風かぁ。外にハンモック吊って、気持ちいい風に揺られながらコ/ナン全巻一気読みとかしたいです。
ん? そういえば今日『ナ/ウシカ』の日じゃないですか?
「行って/くれ! 僕らの/為に行ってくれ!」←Liveで見ないとぉっ(*゚∀゚*)ノ。

※記憶が遠くなるほど前にupした【ボクハアナタガスキダ】(1)の続編です。


【ボクハアナタガスキダ】(2)その1

「お呼びですか、ブルー」
ある晴れの日(といっても精巧なホログラムだけれどね)、僕はハーレイを青の間に呼び出した。
「ヒマなんだ。ちょっと付き合わないか?」
ティーテーブルの上に置かれた木製のチェスセットを見ると、途端にハーレイの顔が曇る。
「私は暇ではないです」
眉間にしわを寄せ、溜め息混じりにつぶやくハーレイを尻目に「エヘッ」という無邪気そうな笑顔をみせてもう一度誘ってみる。
本人も気付いてはいるんだろうけれど、彼は結構コレに弱い。
「僕はヒマなんだ。今、休憩中だろ?」
「にっこり笑ってゴリ押しするところは相変わらずですな」
よくお分かりで。

一方的な商談が成立したところで、チェス版の上に駒を並べる。
雑な僕に比べて、意外とマメなハーレイは駒の並べ方も丁寧だ。
そしてゲームスタート。
と同時にハーレイが口を開いた。
「で? 何かあったんですか」
「お見通しですか。キャプテン・ハーレイ」
「お見通しも何も。アンタ昔っから何かあるとすぐ「チェスやらないか」でしょう。しかもイヤラシイ手で勝ちに来るし」
ハーレイの口調が少し砕けた。
僕がソルジャーになってからは互いの立場を慮(おもんばか)ってフランクに話す事は少なくなったけれど、二人きりになるとお互いに口調が少しだけ昔に戻る。
僕は安心して300年来の友人に悩みを打ち明けた。
「好きだといわれたよ。300歳も年下の子に」
「ほぅ? どういう意味で?」
「そういう意味で」
駒を動かすハーレイの手が一瞬止まる。
だが、すぐ何事も無かったかのように駒を進めた。
相変わらずビショップ(僧侶)の使い方が上手い。
「このビショップの駒、何となく君に似てるよね」
いかつい顔立ち、けれど優しげな表情の僧侶。
司祭用の冠を被り、左手には聖書、そして右手には杖でも剣でもなく、なぜか盾を握っている。
「そうですか? まぁ…キングはアンタに似せてますけどね」
玉座に座った凛々しい顔立ちをした若き王が冠を頭に戴き、剥き出しの剣を膝の上に横たえている。

ひどく使い込まれた木製の駒と盤。
これらは全てハーレイが作ったものだ。

  【つづく】

†☆†*-:-*†☆†*-:-*†☆†*-:-*†☆†*-:-*†☆†*-:-*†☆†*-:-*†☆†

うおぉぉぉい、えらい尻切れです。
こんなカンジでちょこっとずつ、起承転結も無いままだらだらと世間話のように続いていくかと思いますが、たまにでよろしいのでお暇つぶしにでも覗いてやってくださると嬉しいです_| ̄|○。

登場したチェスの駒は「ル/イス島のチェス」から。
あまりチェスに詳しいわけでもなく、写真でちらと見た程度ですが、駒の表情がとても魅力的で「うわぁ、めんけぇ(=かわいい)駒♪」と思った記憶があります。製作者不詳ですが、ルイ/ス島という所でリュックみたいなのにざっくり入った状態で発見されたとか。現在は大英博物館と、あとどこだったか(忘れました、すみません)にあるそうです。
そうそう、映画「ハ/リーポッ/ター 賢/者の石」でも登場してましたね☆。クリスマスホリデーの前くらいにハ/リーとロ/ンがチェスをしているシーン。クィーンの駒が椅子から立ち上がると、その椅子をぶん回して相手の駒をぶっ壊してました。んでハー/マイオニーに「野蛮だわ」とか言われちゃうっていう(笑)。

この「ル/イス島のチェス」。本物はセイウチの牙で作られているそうですが、ハーレイ作ならやっぱり木製で☆。

拍手小ネタもハ/リポタリスペクト的なモノになってしまいました。「賢/者の石」観てない方すみまっせーっん。
でも面白い映画だったっス~( ゚∀゚)ノ。すたんぢんぐおべーしょん☆

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