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【Trick or treat】
それはソルジャー間で行われる一日の終わりの〈申し送り〉でのこと。
「ねぇ、ブルー。”トリック・オア・トリート”って云ってみて」
なんだ藪から棒に…。
「云ってくれないと報告の続きしないよ」
「子どもか! 一体いくつになったんだ君は」
「28でーす」
書類の束を顔の横でひらひらさせながら、にっこり笑ってジョミーが云う。
なんてこ憎たらしいんだ! 説教すべきか? いや、いやいや。ここは年長者が一歩引くべきだろう。
脅迫に屈するようで何やら納得がいかないが、一呼吸おいて咽喉の奥から声を絞り出す。
「ト、トリック・オア・トリー…ト」
「はい!」
待ってましたとばかりにジョミーがマントから”何か”を取り出し、ばさっとすばやい動作で僕の首に掛けた。何だ?
「キャンディレイ?」
色とりどりのセロファンでラッピングされたいくつものキャンディが、レイのように繋がれて肩口に掛かっている。
「ハッピー・ハロウィーン!」
ハロウィンか! すっかり忘れていた。
確か去年も忘れて、次の日にその話題になった気がする。
(あ、ブルー。そういえば昨日ハロウィンだったね)
(そうだね。あまり馴染みがないからすっかり忘れていたよ)
(?)
(僕は身体が弱かったから、その時期には必ず調子を崩していてね。ついぞ一度も近所の家の扉を叩く事はなかったな)
あんな一年も前の何気ない会話を、彼は覚えていてくれたわけか。
胸元の手作りのキャンディレイを眺めながらうっかり感動していると、その感動をぶち壊すようにジョミーが口を開いた。
「ボクも言わないと不公平だよね。Trick or treat!」
ふぅ…。まったく、子どもなのか大人なのか。
はいはいとレイから一個キャンディをもぎ取ろうとすると、その手をジョミーが掴んだ。
「ボクはお菓子よりイタズラのほうがいい」
こ憎たらしい顔が近づき口唇が重ねられる。鳥が啄(ついば)むような軽いバードキス。そして一度口唇を離すと今度は深く口付けた。
《本当は…14歳のキミにあげれたら、もっとよかったんだけど》
接触テレパスの原理か、おそらく本人も流れているとは気が付いていないだろうジョミーの思念が、僕の中に流れ込んでくる。
胸の奥をきゅう・と抱き締められるような感触。なんだかたまらない。
《…HAPPY HALLOWEEN…》
僕はゆっくりと…目を閉じた。
ハロウィン…エンジョイイベントとして日本にも定着してきましたね。大型ショッピングスーパーでも、子どもの仮装用の衣装なんかが売ってて実に可愛らしいです。おぉ…仮装!仮装もいいですね。
ジョミブルのジョミーは原作ジョミがそのまま外見19歳まで大きくなったカンジなんです(でも原作は14歳で外見年齢が止まっちゃってるので、ビジュアル的にはアニメ準拠で)。やんちゃで子どもで、でも時々びっくりするぐらい大人。ブルーは振り回されて大変ですが、年下の彼氏の醍醐味的なモノも味わって欲しいなと(^_^)。
