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「たっ大変でありますっっ!マードック大佐!!」

 ガーディアンのブリッジの扉が開くと、一人のクルーが騒々しく飛び込んで来た。

「艦(ふね)にいるときは艦長と呼べ、新入り。たしか名前は……」
「はっ、Q太郎でありますっ」
「………ふざけた名前だな。まぁいい、一体何事だ」
「大変であります、艦長」
「だから、何事だと聞いている。早く言わんか」
「はっ、艦長、実は……

 蜂の巣は、六角形だったのでありますっっっ


 グレイブは動かぬ表情の口だけを動かし隣に立つ副官を呼ぶ。

「少尉、何故こんなのが我が艦に存在するのだ」
「人手不足だからですわ。どこの基地の人事担当も人材確保には一苦労も二苦労もしておりますもの」
「ソレイドの募集の条件は」
「五体満足で健康である事」
「頭の中身も健康である事を追記するべきだな」
「承知しました」


「そこの馬鹿新人、蜂の巣が六角形であるなど常識だろうが。お前は何角形だと思ってたんだ」
「…八角形……でありますぅぅぅ」
「語尾を伸ばすな。ハチだから八角形だと?馬鹿を超えた馬鹿だな。もういい、用が済んだらとっとと持ち場へ戻れ」
「あのぉ、もう一つ大変な事がありますぅ」
「語・尾・を・伸・ば・す・な!何だ早く言え」

「はっ、咽喉が痛いと訴える相手に、良く冷えた飲み物を与えてはいけないと思うのでありますっっ」

「天井知らずの馬鹿か……。当然だ、余程その相手が気に入らないか、大間抜けでなければそんな事せんだろう」
「あら」

 その時、グレイブと新人クルーとの遣り取りを聞いていたミシェルが口を開いた。

「以前、私がひどい熱を出して声も出ない程に咽喉が腫れてしまった時、氷かと思う程に良く冷えた素晴らしく強力な炭酸飲料を差し入れして下さったのは大佐、失礼、艦長でしたわよねぇ」

 瞬間、ブリッジ内の空気がそれこそ氷かと思う程に冷え切った。

「その上、すぐ飲め、冷たいうちに飲めと無理矢理飲まされて、あの時の裂かれるような咽喉の痛み、わたくし忘れた事ありませんのよ」

 あぁ、艦長、やぶへびだ……

 ブリッジ・クルーは皆、自分の手元ばかりを見て仕事をしている振りを決め込んだ。

「あのぉ、自分は持ち場に戻るであります。失礼致しましたぁぁぁっ」


 藪から出てきた美しいヘビに睨まれたカエルのように妙な汗を額に掻きながら、素知らぬ顔をするクルーに声なき声で助けを求めるグレイブ・マードックは、漸く一言絞り出した。

「語尾を…伸ばすな…馬鹿者」



 Q太郎でございます。 

 はいっ、ここまでお読み下さった皆様、誠に有難うございます。また、ワタクシの何とも恥ずかしい間違いに突っ込まずにいて下さって……馬鹿に突っ込んでも仕様がないってコトですよね。ははっ

 これからも、きっと日常茶飯事的にこんな事が起こると思われますので、その時は、どうぞご指摘下さいませです。
 蜂の巣って六角形だったんだ……。あぁ、驚いた。

 

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