Q太郎でございます。
O次郎「ジョミブルはじめました」
この一言のお陰様で現在に至っております。
なんでこんな事をイキナリ書き始めたかと申しますと、携帯の送信トレイを見たら、去年の今頃にO次郎に宛てたジョミブル~なブツが残ってて。
ジョミ初チュウネタとか、ブルのオンブ紐ネタとか。どれもこれもが書き掛け半端なんだけど。
んで、古いネタ帳見始めたら、うははは、書いてる書いてる。
妄想書き殴り。
激しく痛恥ずかしいのだケド………載せてみました。
ジョミ太、初ちっすに向けてガンバルの巻。
半端なブツですが、もし宜しければ右下からど~ぞ~。
★拍手アリガトゴザイマス。とってもとっても嬉しいです。
励まされます~~。
深謝であります。
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何事もなく過ぎていくような静かな夜。
たったひとり、ライブラリーにいたブルーの元へ、突然、大きな光の球体が飛び込んで来た。
一番奥の隅にある、一番大きな机がブルーの指定席。
驚いて顔を上げたブルーを、光は金色の粉を振り撒きながら一直線に目指し、彼の目の前で勢いよく天井近くまで高く上がると、
パンッ!
仰いだブルーの頭のうえで軽い音をたてて破裂した。
光が、まるで熱いシャワーのように降り注ぐ。
ブルーの髪に、肩に、額に頬に、光の粒がぶつかって、弾けて、零れて、また全てがブルーに集まって彼を黄金色に染め変えていく。
(ジョミーだ…。ジョミーの心だ……。ジョミーの全てが、今僕に向いている……!)
ブルーは、降る光のあまりの眩しさにクラクラと目眩を覚えた。同時に、激しく驚喜し高鳴る胸を、震える身体を、両手で押さえるように抱きしめると耐え切れず身体を前に折る。
彼の長く細い指が、自分の肩を強く掴んでいる。
(こんな苦しさを僕は知らない……)
遠い日の、もう逝ってしまった人の言葉が耳元に鮮やかに蘇る。
(君の唇は、この先きっと現れる大切な人の為のものだよ…。だから、その日まで誰にも触れさせてはいけないよ。王子様のキスを待っておいで…。)
子供騙しだね、と笑いながら心に刻んだ言葉。
三世紀という長すぎる時間に、埋もれて忘れてしまいそうになりながら、それでも、いつかきっと、と諦めてきれずに胸に持ち続けていた想い。
(ほら今、ジョミーがここにやって来る……)
「ねぇ、ブルー、キスしていい?」
夜遅く、シャングリラの艦内のライブラリーで調べ物をしていたソルジャー・ブルーに、ジョミーは何の前置きもせずに、こう聞いた。
ジョミーの顔は真剣そのもの。毎日受けている講義の時も、サイオントレーニングの時も、こんな顔をした事がない。
声が震えない様に、出来るだけ平然と、少しでもスマートに、ブルーへの想いが子供っぽくならない様に、考えに考え抜いた末の、ストレートな問い掛け。
少し方向を間違えてはいるものの、しかし、彼の人生の最大の記念日に成り得るかも知れない、ジョミーの一大決心の告白に対しての、ブルーからの答えは実に淡白なものだった。
「いいよ、どうぞ」
ライブラリーの奥にある一番大きな机を使い、左手をこめかみに当て支えにしながら、とても古く厚い書物を読んでいたブルーは、パタリと本を閉じると正面に立つジョミーに微笑んだ。
(…ソルジャーの顔をしてる……)
ジョミーは自分の体温が急激に下がっていくのを感じた。
口から魂が出て行きそうだ…。
あまりに当たり前という口調。
「どうしたんだい、急に?」とか、「何を言っているんだい、君は?」とか、もっと困ったり驚いたり、もしかしたら怒るかもしれないとか、あらゆるパターンを想定して来たつもりなのに何一つ、かすりもしなかった。
残酷なまでにあっさりとしたブルーの反応は、山程に用意してきた切り返しの言葉を見事なまでに吹き飛ばす。
ジョミーは続ける言葉を見失い、突っ立った棒の様に動けなくなった。
「ジョミー?」
いいよ、と返事をしたのに、その後すっかり固まって動かなくなったジョミーに、ブルーは小首を傾げて問い掛ける。
けれどブルーは微笑む表情を崩さない。決して他者に心の内を読ませない、感情を気取らせない、完璧なまでのミュウの長の顔。
「ブルーってさ、こういう事、別に何ともないの?当たり前?」
ジョミーは自分の声が少し上擦っているのを自覚した。馬鹿な事を聞いてるとも思う。
「当たり前って…うーん…そうなのかな……長老達…昔はリーダーって呼んでたんだけど、彼らはいつもキスしてくれたよ」
そう言って、ブルーは自分の記憶をジョミーに見せる。
ブルーの心は静かな水面のように何の揺らぎもない。
(何も感じていない……)
ジョミーは、ブルーの思念を受け取りながら、自分の告白など、彼にとっては日常の挨拶程度の価値位でしかないのだと思い知る。
ハーレイはブルーの額によくキスしているようだ。古代史の教科書に載っていた鬼瓦みたいな顔が、なんて優しく笑うんだろう。
ブラウ航海長は、ブルーの頭を撫でながら両頬に、キスを繰り返す。
エマ女史はブルーの両手を自分の手で包み、祈りを捧げる様にして彼の指先にキスしていた。
ヒルマン教授は遠慮がちにそっと抱き締めた後で恭しくブルーの手を取り、その甲に唇をのせる。
ゼル機関長には、つるつるの頭頂部へブルーからのキス。
(…ブルー…笑っているの…?)
記憶の中の彼は、何て顔をして笑うんだろう。ソルジャーの微笑みではない、自然に零れる笑み。
古い記憶も流れ込んでくる。ジョミーの知らない顔がたくさんいる。
リーダーと呼ばれていた頃のミュウの初代達だろう。今はいない彼等は、ブルーを抱きしめては愛おしい気にキスをしている。
なぜ、こんな記憶を見せられなければならないのだろう、ジョミーには理解が出来なかった。
出来ないながらも、腹だけは立ってくる。 何だって、こんなに気安くベタベタとブルーに触っているのだろう。
ブルーもブルーだ。抱きしめられて、キスされて、何で笑って許しているんだよ。
知らない顔の、赤く長い巻毛の男はブルーの腰に手まで回して、彼の瞼にキスをしている。幼い顔をしたブルーの蕩けそうな顔がジョミーの神経を逆撫でする。
(ブルーは全然わかってないや…。僕がどんな想いでここに来たかなんて……。)
無神経にこんなものを見せ付けるブルーと、無遠慮にブルーを抱きしめるリーダー達。 どちらにも腹を立てながら、ジョミーは今まで見せられた記憶の中に、自分の望むカタチがない事に気が付いた。
「ブルー、唇のキスってないよね」
途端に、ブルーの記憶庫が分厚い隔壁で何重にも閉ざされてしまった。頭の中が真っ暗になる。
いきなり鼻先で扉を閉められ、当然ジョミーは面食らったが、ブルーらしからぬその行為に、自分には知られたくない重大な秘密があるのだと確信し、尚の事腹が立つ。
ブルーはといえば先程から姿勢も表情も変えずに、じっとジョミーを見つめている。
「ブルーってさ、唇のキスってした事ないよね」
『ない』の部分を殊更強調して、ジョミーはもう一度同じ質問をする。知らず人差し指を自分の唇に当てていた。
不愉快な表情を隠そうともしないジョミーに、ブルーは嬉しそうに目を細めた。
(…怒ってるの?…ジョミー?……)
微笑みを模っていた口許が、愉しそうにキュウッと上がる。
ジョミーの仕草を真似て、ブルーは悪戯な笑みで答えた。
「…ひぃーみぃーつぅ…」
ブルーの仕草に、初めて見る彼の表情に、ジョミーはカァッと身体が熱くなるのを感じながら、きっと今の自分は、呆れる程に酷い顔をしてるだろうと思った。
(僕をからかって、遊んでいるの…?)
目の前に座って笑っているブルー。綺麗な綺麗な、ミュウの指導者。
手を伸ばせば直ぐに触れる事が出来る筈なのに、ほんの数歩分しかない彼への距離が、とても遠い。
この気持ちは届く事はないのかもしれない。
ジョミーの心が少しずつ沈んでいく。
特別だって思っていた。ブルーの側で、彼に触れる事を許されるのは、自分だけだと思っていた。
ブルーはいつも独りだったから…、どこにいても誰といても、彼は独り。
シャングリラに来て直ぐ、ジョミーは気付いた事がある。
ごく一部の者を除き、長老以外のミュウ達は、ブルーを仲間だと思ってはいなかった。
ミュウという存在すらも凌駕した、異質で遥か遠い次元の人。
話かけるどころか、近づく事すら出来ない。
ブルーが艦内を歩く時、皆が道を空け、壁際に固まって、彼の姿が見えなくなるまで畏敬の念を込めた礼をとりながら、息を殺して見送る。
そんな若いミュウ達に、表情を変える事なく足速に通り過ぎるブルー。
固く結ばれていると思っていたミュウの世界の、実は歪んだ一面をジョミーは見た気がした。
ソルジャー・ブルーを絶対の守護者として、彼の能力を庇護を求めるだけ求めておきながら、自分達の日常の生活の枠からは徹底して排する。
ブルーはいつも与えるだけ、誰からも何も受け取る事は出来ない。
ソルジャーという名の孤独の檻…。
ジョミーはずっとそう思ってきた。今日の今日、今の今まで。
(なんて勝手な思い込み…)
記憶の中のブルーは笑っていたじゃないか。
他のミュウはどうであれ、長老達、過去のリーダー達は皆ブルーを愛して、彼に触れて抱きしめて、ブルーもそれを受け取っていた。
ブルーが心を預け、唇を重ねたであろう相手はブルーの記憶の中できっと大切に眠っている。
それは、あの腰までもある赤い長い巻毛の人だろうか……。
ブルーに見出だされ認められて、彼と同じソルジャーていう名を冠する自分だけが、ブルーの心に寄り添えるのだと一人勝手に盛り上がってた。
(自惚れてた……)
特別だと思い込み、枕相手に練習までして、これまでに絶対に無い程の覚悟を決めて、此処にやって来たというのに、何て間抜けなんだろう…。
ジョミーは目の回りが熱くなってくるのを感じた。
(ブルーは大人で、僕は馬鹿で幼稚な子供だ)
俯いて、自分のつま先を見ていたジョミーの視界が滲んでくる。 きっとブルーは自分の思い上がりに気が付いて呆れているに違いない。
恥ずかしくて、情けなくて、走って逃げてしまいたいのに、足が床に吸い付いたようにそれも出来ない。
泣き出したいのを堪えていると、鼻の奥がズーンと詰まってくる。こめかみもズキズキ痛みだして目を開いていられない。
こんな顔だけはブルーに見られたくなかったのに、ジョミーは堪え切れずに目をギュッと閉じた。
零れた涙の雫は二つ…。
可哀相な程にうなだれるジョミーの唇に、柔らかなものがそっと触れた。
驚いて顔を上げると、さっきから何も変わらずに、ブルーは静かに座ってジョミーを見つめている。
(これは、ブルーの思念のキスだ。)
ジョミーが、今触れていったものを確かめるように指で唇をなぞると、ブルーも同じようにジョミーの仕草を真似る。何て柔らかな微笑み。
「おばかさんだね、ジョミー。」
ブルーは立ち上がると、今度は机に腰を掛けて、スラリと長い脚を組んだ。
そして、おいでと手招きをする。
(分からないかい?ジョミー…。僕の心がこんなにも君で溢れている事を……。)
うへぁぁぁぁ!
改めて読み返すと……身体から滲み出る嫌な脂で石鹸が作れそうだす。
一体どんな病気に罹れば「王子様のキス」だなんて台詞を書けるのやら。
で、チッスに辿り着く前に書き掛けのまま一年漬けておいてます。
ああジョミ太、生殺し修行中。
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