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昨年の夏コミでアヒル隊長こと葵アルトさま発行のハレブル無料配布本に書かせて頂いたお話の続きです。
アニテラ本編に倣って皆さんお亡くなりになってます。
で、続いてます。
今月の頭くらいからショボショボと書いておりまして、出来上がったらUPしようと思っていたのですが、たったこれだけ書くのにもう今月も終わりそうです。なんて事だ!
で強制的に出来上がった分だけでも晒してしまえと、己に鞭を入れてみました。え?牛だから焼き鏝だろう?そうですね。鞭でも焼き鏝でも前でも後ろでもOKです。
途中でブッツリ切れてますが、宜しければ読んでやって下さい。
追 想 ~その後
それは「世界樹」というご大層な名で呼ばれる、しかし見るからに奇怪な様子の施設だった。
まるで毒キノコのようだと言ったのは確かゼルだ。
崩壊し始めた「世界樹」の、しかしまだ地下深部にいるであろうソルジャー・シンを探して、フィシスを伴いハーレイ達は向かう。
パニックを起こし悲鳴を上げて逃げ惑う人間達を落ちてくる瓦礫から庇い、逃げる先を教え、そうして彼らはその流れとは逆を行く。
ソルジャーを置いては行かない。
自分達だけ逃げるなどしない。
なんと命ぜられても。
二度と。
もう二度と。
決して。
しかしこれ以上は進めないと悟ったその場所で、思いがけず彼らは幼い子供達に出会った。
地下深い場所でありながら、まるでそうとは思わせぬ高いドーム状の天井は月や星や太陽が凝った意匠で施され、照明が落ちかけ薄暗い中であっても、その壁には子供達が喜びそうな鳥や動物や植物が明るく優しいたくさんの色を用いて描かれているのが分かった。
床を大きく揺らし壁に亀裂を入れ、徐々に近づいてくる激しい爆発音と崩落音に身を寄せ震えて耐えていた子供達は、突然現れた見ず知らずの大人…ハーレイ達を見るなり、わっと泣きながら抱きついてきた。
どうしたの。
何があったの。
ぼくたちはどうしたらいいの。
ギュウギュウとしがみついてくる子供に導師達が逆に戸惑い体を固くする。
施設内の大人とはどう見ても違っているだろうに、恐れも怯えも躊躇いすらなく縋り付いてくる小さな体は、けれどとても大きな温もりを導師達に与えてくれた。
幼い言葉で懸命に訴える彼らの不安を少しでも取り払ってやりてくて、戸惑いつつぎこちなく子供達を抱き締め「もう怖くはない、大丈夫だよ」と優しい言葉を掛けながら頭を撫でてやれば、子供達は泣くのをやめ安心したように頷いて可愛らしい笑顔さえも浮かべて導師達を見上げた。
言葉にできない想いが胸に満ちてゆく。
幼い生命を胸に抱く。
人の子もミュウの子も何の違いなどないではないか。
ただ、ただ愛おしいだけだ。
誰かが涙を堪え鼻をすするのをハーレイは背中で聞いて、彼もまたジワリと眦が熱くなるのを感じた。
不気味な轟音と共に底から突き上げてくる地揺れは更に大きくまた間隔を狭めて、もうここが潰れるのも時間の問題だと導師達は覚悟を決めて互いに顔を見合わせた。
ソルジャーの元へと駆けつける事はできない。
地上へ戻る事も。
ならばせめて、せめてこの子供達だけでも救ってやらねばならない。
我らの生命はこの子等の未来となって、そうして繋がれてゆけばいい。
ハーレイ達は子供達一人一人を抱き締め、頬にそっと幸多かれと祈りを込めたキスをすると、自分もここに残るのだと嫌がるフィシスと共にありったけのサイオンを絞り出してシャングリラへとジャンプさせた。
どうか無事で。
どうか幸せに。
どうかその小さな手が、いつか新しい世界を希望と友愛に満ちて作り出してくれるように。
彼らの姿の消えた暗い空間を見上げて、導師達は子供達を受け入れてくれるだろう愛する白い艦へと願いを飛ばす。
大きな微笑みを浮かべて。
美しい天井が凄まじい爆音と共に崩落(お)ちたのは、それからほんの数瞬の後であった。
** ** **
「キャプテン、キャプテン、そろそろ起きてくれないだろうか」
暗闇から引き上げられるような、そんな声を聞いてハーレイは目を開くと、赤く燃える地球が足下にあった。
どうやってあの崩落から助け出されたのかとボンヤリとする頭を振りながら横を見れば、ソルジャー・シンがどこか微笑んで自分を見ていた。
「ソルジャー、ご無事でしたか」
「見た目はね」
でもホントは無事ではないんだけどね。
ボクもアナタも。
その言葉に、ああと溜息を吐きながらもう一度足下を見る。
「やはり我々はあの場所で……」
「うん、まあ、そんなトコ」
フフと「ジョミー」の顔をしてシンは笑った。
ブラウやエラ達はどうしたろうかと訊ねれば、行くべき所に皆向かったとシンは言った。
ゼルは「若造どもを監督せにゃならん!」とシャングリラに残ると頑張ったらしいが、ヒルマンに様々と宥められて諭されて、最後には「遠くから見守るのも年寄りの大事な役目だの」と納得したらしい。
行くべき所とは一体どんな場所なのかは、どうやらシンもよくは分からないらしい。
ボクも死ぬのは初めてだから、とシンは肩を竦めて笑った。
彼のその笑顔にハーレイもつられるように温かな溜息を吐きながら問うた。
「ジョミーと呼んでも?」
「構わないよ」
ソルジャーの名はトォニィに託したからね。
そう言ってジョミーは燃える地球を見つめた。
身に纏う深緋のマントと共にソルジャーの象徴でもあったブルーの形見の補聴器はその耳から外されていた。
ソルジャーの名を託すと同時にトォニィに手渡されたのだろうか。
「終わったのですか」
「そうだね。終わって今また始まったんだ」
ジョミーはゆっくりとハーレイに顔を向けた。
深い、何と深い言葉だろうとハーレイは思う。
憎しみも悲しみも、赤く燃える地球に置いてきた。
ぬったりと澱のように身の深底に巣食っていた絶望や怨嗟の昏い記憶は、灼熱の炎に焼き尽くされ清められ、いつかそれは赤黒く乾いた岩肌の上で、ささやかな何か命に生まれ変わって、そうして地球の再生の歌を聞けるだろうか。
いつか。
遠い未来の。
更にもっと遠いいつかの朝に。
「キャプテン、長くボクを支えてくれて有難う」
思いがけない言葉だった。
「アナタがいてくれなければ、きっとシャングリラは地球へ辿り着けはしなかったと思う。強引で冷酷で冷徹で、鬼のようなソルジャーだったからね、ボクは」
まずキャプテン、アナタが。そして導師達がボクを信じてくれた。
だからこそ皆もそれに従ってくれた。
もっと良いやり様があっただろうに、でもボクにはこのやり方しかできなかったからね。
間違っていたとは思わないけれど、だからと言って全て正しかったとは言えないな。
「いいえ」
静かに、しかし強くはっきりとハーレイはジョミーの言葉を否む。
「いいえジョミー…、いいえソルジャー・シン。貴方であったからこそ、私達は此処まで来ることができたのです」
それは心からの言葉だった。
彼以外の誰がシャングリラをこの場所まで導けただろう。
すっとハーレイは両の腕を伸ばしてジョミーの肩に手を置くとそのままゆっくりと抱きしめた。
まるで父親が息子にそうするように。
思いもよらないその抱擁にジョミーの肩が驚きに小さく揺れる。
「よく…頑張りましたね」
貴方は私達の誇りです。ジョミー。
我らの愛しい希望の光。
「本当は私ではなく言ってあげられれば良いのでしょうが」
それでも言わせて欲しいのだと、ハーレイは抱き締めたクセのはねる金色の頭を一度だけ撫でた。
「まるで子供だ」
少し硬い声はどこか素っ気無く、けれど怒っているようには聞こえなかった。
「ありがとう」
ふと身体を離して目を伏せ僅かに俯いてジョミーは小さく呟いた。
ありがとう。
まさかアナタにこうして貰えるなんて思ってもいなかったよ。
言いながら口元は緩やかに笑みを形作る。
「アナタには敵わない」
二度三度と頭(かぶり)を振り、ジョミーの翠緑の瞳は再びハーレイを見上げる。
「ボクを憎いとは思わなかった?」
「私が、貴方を?」
「ボクはアナタの一番大切なものを取り上げたから」
ブルー。
ジョミーの唇が小さく彼の人の名を呼ぶ。
ああ。
君はずっとそれを聞きたかったのだろう。
ハーレイは深く息をつき咽喉奥で少し笑うと、ゆっくりとしみじみとジョミーに言った。
「馬鹿ですねぇ……」
続く
いやもう嬉しいです、盆と正月が一緒に来たくらいに嬉しいですっ!
そっか、そっか……あれから後にこんなドラマが…。皆さんお亡くなりだというのに、ほんのりと、じんわりと胸が温かくなるのは、熱くなるのは、皆さんの「想い」ゆえなんでしょうなぁ…。
船長とジョミー。なんかね、今更ながらに思ったです。船長はジョミのパパ的ポジションでもいけるよなぁ、って。つか、パパだったのかも…。間に若干一名挟まってるから、ややこしいだけで(笑)
で、で。…ここで「続く」ですかいっ!
あぁぁぁぁ、「ブルーを返すよ」の続きはどうした、ジョミ! それを言わずして「続く」とは何事じゃあ!
言わなきゃお菓子あげないもんね、悪戯しちゃうもんねっ!
ああ、でもでも、Q太郎様、ありがとうございましたぁ~! んな、焼き鏝なんか言いませんから! 上等の飼葉をサイロいっぱい差し上げますから、続きを~っ!!!
続き待ってる♪
コメントありがとうございます。
いやもう今更感満載ですが、「ブルーを返す」って言っといてそれっきりというのもアレなので、続きを書いてみました。さっさと「ブルーを返すよ」を言わせて終わらせようと思ったのになんだか寄り道が多いです。ああっお菓子も欲しいですが、上等の飼葉にも心揺れます。続き頑張りますので両方がいいです~~。
ラッコ様
コメントありがとうございます!
なんつかね、ジョミっていつも何かに追い立てられているようでね、誰ともゆっくりとじっくりと話をできなかったんじゃないかなって。もっとみんなと話をしたかっただろうな~と思うのね。船長もジョミとのんびり話をしたかったかも~とか。ブルーについてとかね。そんな感じでもちょっと続きます。「待ってる♪」が嬉しいです。
んじゃ、お菓子と上等の飼葉をドカンとお届けさせて頂きますね~。トラックは教頭先生が運転して行かれますので、よかったら悪戯しちゃって下さいv
コメントありがとうございます!
教頭先生がトラック野郎一番星でお菓子と飼葉をお届け下さるのですか。おおぅアリガトウゴザイマス✩ イタズラなんてとんでもない。牛山目一杯におもてなしして、長旅の疲れを癒して頂きますですよ!
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